サルサなどのソン(古いキューバの音楽の一つ)を起源としたラテン音楽の多くは、クラベスという1種の拍子木によって叩きだされるクラーベ(Son Clave)という基本リズムを意識して作られています(譜例1と2)。旧来は実際にクラベスを叩いていた時代もありましたが、現在ではクラベスを叩かずにリズムのベースとして意識されるだけというのがほとんどです。
楽譜をクリックすると音が聴けます(MIDI file)
この譜例のとおり、クラーベには2種類あって、曲によって違います(これを通称「クラーベ方向」と言います)。その小節に音が幾つあるかということでみて、「ツー・スリー・クラーベ」、「スリー・ツー・クラーベ」と呼び分けます。
1小節毎に基本リズムが変わるので、リズムの重さや硬さ、雰囲気などが変わるのは言うまでもありません。「2」のほうは頭が休みということもあり、タイト(リズムが硬い雰囲気であること)になりますが2拍目がオンビート(拍子と合うこと)となるために落ち着いた雰囲気をもっています【緩和=リラックス】。また、「3」のほうは3つの音の間の間隔が同じで拍とも合わない(音の長さ=音価が拍に対して3/4となる)のでルーズな印象があり、浮いた感じで落ち着かない雰囲気をもっています【緊張】。
2−3クラーベにしろ3−2クラーベにしろ、この2小節単位で繰り返すリラックス状態と緊張状態に支配されている音楽、それがサルサなんです。(つづく)
※クラーベ(clave):もともと「手がかり」とか(問題解決の)「鍵」とか(話の)「ポイント」とかいう意味があります。
clave para resolver el problema=問題解決の鍵
音楽用語では、ト音記号などの音部記号の意味(英語のclef)になります。いずれにしても物事の重要なポイントの意味ですね。
そして、サルサなどの音楽でその曲のクラーベをたたき出す楽器がクラベスなわけです。もちろんクラーベの複数形(claves)。2本ありますからね。